おまえはなにでできている

童子のような顔をする。そのようなことを言われたことがある。
即座に、童子ではないと反論したのだが、そうやってすぐにむきになるところが童子なのだと
笑ってあしらわれてしまった。骨と皮しかない薄い手のひらが、頭をくしゃりと撫でつける。
お前は、自分の主をなんだと思っているのか。温かい手が行ったり来たりするのを黙ってやりすごした。
ここでやめろと声を荒らげれば、また、童子だ何だと言われてしまい兼ねなかったからだ。
それだけは、非常に癪だった。

かの忍びの朝はいつも早い。
己を起こしに来る頃にはすでに二つも三つも仕事を終えた後である。
一晩中任務に駆り出されて、己が起きる頃に草屋敷に戻っていくことも少なくはなかった。
一度、夜中に厠へ向かおうとして、任務帰りの彼とはち合わせたことがある。
右の半身に派手に返り血を浴びており、時間が経って黒く変色してしまっていた。
呼吸は荒く、肩で息をし、庭に設けられた井戸の前に立ち尽くしていた。
月明かりに照らされたその姿はもはや人でも忍びでもなく、ただただ美しかった。
この忍びは己のために、あちらこちらに出向いては、部下が死のうと仲間がほふられようと
たった一人で戻ってくるのだ。必ず。血と汗と土埃と、闇にまみれながら。
思わず佐助、と呼びかけると、彼は緩慢な動きでこちらを向いた。
目が合えば、なんとも惚けた顔をして、旦那、起きてたの?と尋ねてくる。
ぽつり呟いたその声は今にも泣き出しそうな色をしていて、まるで童子のようだと思った。

 

 

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