いとおしい病気

初めて他人と口づけを交わしたのが十の時。
身体を交わらせたのが十二の時で、そのどちらも石田だった。

血色の悪い唇が何とも寒そうだと感じ、思わずそこを食んだのが始まりで
けれども意外にも温かくやわらかい感触に、己はすぐに夢中になった。
なあ、いいだろうと強請れば、こくりとひとつ首肯して顎を上げてくる。
触れるだけだった口づけが、ついばむようなそれになり
互いの舌を絡め合い唾液を流し込むように変わるのにも、そう長くはかからなかった。

己は、彼の初めての友であった。
何も知らない彼は、ただ目前の友が求めてきたから、それに応え、返しただけのことである。
今思えば、それがひどく哀れで、愛おしくて、仕方がない。

彼はこちらが触れる時、なぜだかいつもまぶたを閉じる。
白すぎる頬に添わせるように片方の掌を宛がうと、豊かなまつげがふるりと揺れた。
そうしてぽつり呟くのだ。お前のここは温かいなと。己の手に、頬ずりをしながら。
出来ることなら、もっともっと温めてやりたいと思った。
だから、彼を抱いた。

初めは所作も手順もへったくれもなかった。
互いに着物を脱ぎ捨て、寒さで肩を震わす彼を抱きしめながら口吸いをする。
合間合間に名前を呼ぶと、くぐもった声でいえやすと返って来た。
唇の端から、つ、と彼の唾液がこぼれたのを、顎先まで見送り、己の舌で絡め取る。
そのまま彼の喉元に噛みついて、赤く色づいたところを今度は舐めてやった。
その度に彼は、ぐ、と喉を鳴らして身体を強張らせてしまうので、同時に背中を撫で続けた。
その内、己の胸のあたりに固くなった彼の突起を感じるようになった。
骨と皮で構成された彼の身体の上で、小さなつぼみが二つその存在を主張している。
吸い寄せられるように指先で両方摘んでやれば、彼は小さく啼いた。
触れられる度、あ、あ、と身体を震わせ、こちらの名を呼んでくる。
これまで何とか上体を起こしていたものの、それもついにはのけぞるようになったので
そうっと蒲団に横たえてやった。血色の良くなった肌にうっすら汗が浮かんでいる。
銀の髪が白布に乱れる様を見て、自然、喉が大きく上下した。

三成、綺麗だ、綺麗だ。

常日頃から思ってはいたことが口からするりと抜け出して、音になる。
いじるだけでは飽き足らず、舌で突起を転がし始めた頃には
己の下肢の間にあるものも、彼のそれも固く立ち上がっていた。

触るぞ、三成。

念のための確認も彼の耳にはとうに届いていないようで
押し寄せる初めての感覚にただただ唇を噛みしめているのを見とめただけだった。
かく言う己も、もう限界だったのだが。

彼のものをゆるく握り込んで、そのまま掌を上下に動かす。
何度かそれを繰り返していると、彼がひときわ甲高く啼き、事果てた。
己の掌は彼の白濁で汚れたが、自慰をした時のような嫌悪感など何一つ感じなかった。

ふと目前の彼を見る。
肩で息をする彼のまつげの先には、涙のつぶが付いている。
いえやす、と舌足らずに名前呼ばれて初めて、己が、
己が彼にしたことが、そら恐ろしくなった。

再び、彼に名前を呼ばれたところで
その恐怖を振り切るように、いまだ昂ぶった己のものを彼に宛がった。
衝動のままに穿つだけの行為にも関わらず、彼は、それはそれは美しく、笑った。


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