浮かぶ白さにやられたのは

戦果の報告を行った後、ふと目を離した隙に彼が消えた。
豊臣の見事な勝ち戦で、意気揚々と帰参の準備を進める周囲の兵に聞いて回れば
ある者が陣の後方にある林に向かってふらふらと歩いて行ったのを見たと言う。
ありがとうと声を掛け、首を傾げながらもそちらの方に足を向けた。
日が、西の方に傾きかけている。暗くなってからでは厄介だと自然小走りになっていった。

うっそうと生い茂った木々を掻き分け進んでいったところで彼を見つけた。
幹に両の手をついて力なく座り込んでしまっている。
これはただ事ではないと急ぎ駆けより、彼の肩に手をかけようとしたところで
その手を勢いよく跳ねよけられた。彼を見やると、下を向いたまま、近寄るなと言う。
その声はひどく掠れており、先ほどから浅い呼吸を繰り返している。
こうなったら強硬手段だ。
彼を後ろから抱き込んで、汗で湿った額に手を当てた。熱は、ない。

「家康、貴様何を…」

彼は腕の中で身じろぎをして、離せ、離せと声を荒げた。
もしや怪我でもしているのかと、具足の上から身体に触れてみるが
抵抗するだけで特に痛みを訴えるようなことはなかった。
顔だけをこちらに向け、ぎり、と睨みつける瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる。

まさかと思い、今度は腰を覆う具足を緩め、下帯の中に掌を侵入させると
ひどく熱を孕んだものがそこにはあった。

「…馬鹿が、やめろ、」

羞恥に耳を真っ赤にさせた彼はよりいっそう暴れかかったが
足の間にあるものをゆるゆると撫でてやれば、やがてすぐに大人しくなった。

「馬鹿だなあ三成は。こんなこと、戦場ではよくあることだ。」
「うるさい、死ね。」
「それに、そんなになるまで我慢しなくてもよいのに。」
「我慢などしておらぬ。貴様、いい加減離したらどうなのだ、」
「離さない。」

耳が弱いのをいいことにわざとに耳元で低く囁けば、彼はびくりと肩を震わせた。
あ、と小さく漏れた嬌声に思わず笑みがこぼれる。

「三成。」
「…なんだ。」
「…いや、何でもない。」

頼むから、他の輩にこのようなことを許すなよ。
子ども染みた独占欲を飲み込む代わりに、羽織から見え隠れする白いうなじへ
勢いよく噛みついた。




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