それがすべてなのに

ややこしいもの、理解できないものは得手としないのに
あの独眼の彼だけはどうやらその限りではないらしい。
その気まぐれさに腹も立てば、へそ曲がりな上に頑固者という
およそ一国の主とは思えない言動行動も己の前では多々見せるので
それはもう呆れかえったりもするのだが、かと言って
そのまま放っておけるかと問われればそれは否だ。

時折ひどく遠くを見つめているその隻眼の
まぶたを縁取る長いまつげが瞬きをするたびに揺れて、揺れて。
その深い色のひとみに己の姿が映り込むくらいそばで名を呼ばれれば
それだけで胸のうちがぐちゃぐちゃに締め付けられるような心地がするのだが
その正体を知りたいとすら思う。


※タイトル※
はだし様(http://nobara.chu.jp/sss/index.html