いま熟れた(学園/慶さす)

彼は机につっぷしている。
開けはなれた窓から吹き込む風に合わせて
頭の高いところで一つにまとめられた後ろ髪がわずかに揺れた。
夕日がやけに紅くて、思わず目を細める。まるで血の色のようだった。

そんなところで寝てたら風邪ひくよ。声をかけても反応はない。
まさか本当に熟睡している?彼の、ひとつ前の席の椅子を引いて腰かけて
今度は耳元で、おーい、と呼んだ。すると、大きな体がもぞもぞ動き出した。
枕にしていた両腕から頭をのそりともち上げて、こちらをぼんやり見つめてくる様は
まるで、大型犬のようだった。親戚の家で飼っていたゴールデンなんとかという
やけに毛並みの良い犬の、起きぬけの感じにとてもよく似ている。
さすけ?と寝ぼけ眼で問われたので、そうだよ、おはよう、と返した。
彼は、片方の目を擦りながら、何やらぶつぶつ呟いている。
どうやら、眠ってしまったことを後悔しているらしいのだが
その割に、俺眠っちゃったんだあと口調は実に悠長だったので
佐助は思わず、ふ、と笑った。

すると、彼は急に目をばしばしまたたかせて、こちらを見つめて来たものだから
何事かと、こちらも彼を見つめ返したところ、彼はなぜだかにっこりとほほ笑んだ。
佐助の笑った顔って、すっごい美人さんだよね。
瞬間、今度はこちらが机につっぷしていた。心なしか、顔が熱い。
何なの、ほんと。勘弁して欲しいと、佐助は心のうちで盛大に慶次を呪った。

 

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