息吹(戦国/真田主従)
小さく息を吹きかけると、掌の上で力なく横たわっていた小鳥がぴくりと羽根を動かした。
そのまま空高く舞い上がっていくそれを見て、主は歓声を上げた。
お主、死んだものを生き返らせることが出来るのか?
その声があまりにも大きかったので、思わず主の口に前に己の人差し指をあてがう。
内緒だよ。出来るものと、出来ないものがあるけれど、体が小さいものならたいがい出来る。
そう言えば、彼は丸い目をさらにきらきらと輝かせた。お前は、神さまのようだな、と。

神さまな訳、ないじゃないか。
同じ神でも、俺は死神だ。
殺した分だけ、このように、息返らせることができる。
真っ当な人間はこんなこと出来る訳ないのだ。


もしかしたら、旦那も出来るかもしれないよ?
すると、主はそれはそれはうれしそうに微笑んだ。

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本来(戦国/真田主従)
忍びの仕事ではないと思う。
団子の買い出しを配下の忍びに頼む主などそうはいないだろうなと
ぼんやり考えながら、城へと向かう森の間をすり抜けていく。
けれども、彼がとても幸せそうに団子を頬張るので
それもありかな、なんて思ってしまうあたり
すっかり主に丸めこまれているということだ。
いやはやこれも惚れた弱みである。

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求めるもの(戦国/真田主従)
本日の任務の報告に主の部屋を訪れた。
首尾よく事を運んだ己に、主が褒美を授けようと言う。
ほしいものはあるかと尋ねられたので、後ろ足で畳を軽く蹴って主に詰め寄った。
耳元で、囁く。旦那のが、欲しい。
そうして主の足の間のあたりをするりと撫でてやると、彼はひどく狼狽してみせた。
みるみるうちに顔が真っ赤になって、見ていてとても面白い。
お前は、ほんとうに…!声にならない声を上げて、主は部屋を出ていってしまった。
恐らく今夜、彼の寝屋に呼ばれるだろうな、と忍びは夜を待ち遠しく思った。

 

表現15のお題
両忘様(
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