あかとしろ
吐いた息が白く色づいて、消えた。
政宗は首元を覆う灰色のマフラーを口元までぐいと引き上げると
誰に聞かせるでもなく、さむい、と独りごちた。
校門から生徒玄関まで続く桜並木は、この時期になるとすっかり葉を落とし
あたり一面に茶色の絨毯が広がっている。歩くたび、かさかさと軽い音がした。
小十郎が朝から出かけてしまったため、久々に駅から学校まで歩いて来たのだが
ついこの前までの暑さが嘘のような冷え込みだ。
政宗が堪らず小さくくしゃみをしたところで、後ろから政宗殿、と自分を呼ぶ声がした。
鼻を啜りながら政宗がを降り返ると、幸村がこちらに向かって駆けて来る。
その首にはマフラー1つ見当たらない。政宗は思わず顔を顰めた。
隣に並び、おはようございますと挨拶をする幸村に、お前、寒くないのかと質問で応えると
彼は一瞬きょとんとしたような顔をしたが、ここまで走って来たから寒くなどありませぬ!と
低血圧の政宗からすると信じられないような答えを返してて来たのでひどく驚いた。
お陰で、少々熱いくらいでござると笑みを浮かべる幸村に、政宗はすっかり毒気を抜かれてしまった。
前に向き直りながら、あんたらしいな、とだけ言ってまたマフラーを引き上げる。
すると幸村が、政宗殿は鼻の先が真っ赤だと言って
彼の長い指で自分の鼻先にちょんと触れてきたので、政宗は思わず目を見開いた。
鼻だけでなく、顔まで真っ赤になった政宗を見て、幸村は声を上げて笑った。