幸村は政宗へ何をプレゼントするか悩みすぎて、
結局決められなかったようです。
あなたと私にできること
それじゃあ、お前が欲しいと呟くと
幸村は一瞬呆けたような顔をして、次の瞬間見事なまでに顔色を変えた。
これもある種の芸と言っていいほど真っ赤に染まった頬やら耳やらを見とめて
政宗は、ぶは、と腹を抱えて噴き出した。
大声で笑い転げる政宗を見て、彼もようやっと意識を取り戻したのか
な!政宗殿!からかうのもいい加減にして下されと困り顔で訴えた。
けれど、冗談のつもりはない。
幸村が欲しい。いつの頃からかずっと思っていた。
今のような関係になる、その前から。ただずっと欲しかった。
明るい色をした目だとか、自分のと比べると少しだけ固い髪だとか
竹刀タコだらけの厚い掌とか、血色の良い頬だとか、全部を。
なおも笑い続ける自分に、それに、と幸村は続けた。
それだと、某の方が嬉しい思いをすることになるから、いけない。
朱色の顔を隠す様に、口元を片方の手で覆っていたが
彼の目にはすでに別の色が浮かんでいた。
彼は時たまこのような顔をするので、ひどく心臓に悪い。
その証拠に、政宗からぴたりと笑いが消え去った。
ああ、まずい。これは。
そう思うより早く、幸村がこちらに大きく一歩踏み出した。
思わず後ろに下がろうとした政宗の、右の指に、さっと彼の指を絡めて
あの目でこちらを真直ぐに射抜く。あっという間に動けなくなった。
政宗殿と呼ぶ声は、先ほどのうろたえた声とはまるで別物で
本当に同じ人間から出されているものかと疑ってしまう。
誕生日おめでとうという言葉と
幸村の唇が自分のそれに触れたのはほぼ同時だったので
彼が離れた後、もう一度、とねだれば
お望みならばいくらでもと彼は笑い、絡めた指先に力を込めた。