Lost child.

朝起きると、なぜか枕元に包みが置いてあった。
深い藍色の包装紙に、緑のリボンがかけられたそれを手に取り、はあとため息をつく。
クリスマスまではあと3カ月程はあるし、サンタクロースを信じるような歳でもない。
だと言うのに、毎年小十郎は誕生日になると枕元にプレゼントを置いていくのだ。
ガキじゃねえんだからとぼそり呟いた政宗の声は、自分でも驚く程穏やかだった。


簡単に着替えを済ませてキッチンへ向かうとすでにそこには小十郎がいて
政宗に気が付くと、おはようございますと笑顔を浮かべた。
彼が、政宗より遅く起きてきたことは恐らく一度もない。
どんなに忙しくても、必ず朝食を作ってから出かけて行く。
何もそこまでしなくても大丈夫だと、以前伊達は申し立てたこともあったのだが
いくら政宗様の頼みでも、これだけは譲れませぬとひどく嬉しそうに話すものだから
好きにしろと言うほかなかった。小十郎が母親だったら良かったのにという言葉は
彼が聞けばきっと悲しむので、政宗は口に出したりはしなかった。

欠伸をしながらテーブルに付くと、朝にしてはやけに豪勢な食事が並んでいて
政宗は思わず目を見張った。小十郎が作る料理は大抵美味いのだが
その中でも特に政宗の好物ばかり揃っている。
出汁巻き卵に切り干し大根、白菜の浅漬けにほうれん草の味噌汁。
そこに、今しがた彼がよそってきた炊きたての白飯と焼き鮭の切り身が置かれたところで
堪らず腹の虫がぐうと鳴いた。彼はそんな自分を見て破顔し、お上がり下さいとのたまった。
今日は政宗様の誕生日なので、特別腕を振るいましたと。

政宗は、両手をぴったり合わせていただきますと呟くと
いつもの倍近く時間をかけて食事をとった。
むしろ、味わって食べないと、ばちが当たると思ったほどだ。
政宗がうまいうまいと言いながら箸を進める様を見て
小十郎はほんの少し照れくさそうに、笑った。