真夏の逢瀬
風がぴたりと止んで再び蝉が鳴き始めた。
しばらくして、チャイムの音が部屋中に響き渡る。
ひんやりとした長机に上半身をあずけて突っ伏していた政宗が
その音に反応してぼんやりと目を開けると
いつの間にこちらに来たのか
幸村が机を挟んだ向かい側に座っていたので驚いた。
目を覚ました政宗に気付いた幸村は
よく眠っておられたなとこちらを見つめて言い
あまりに静かに休まれているから、死んでいるのかと思ったと笑った。
起きぬけの重い体に鞭打って、壁にかかった時計に視線をやると
すでにこちらに来てから1時間以上経っていた。
理科準備室は、日の光が入って来ない校舎の端に位置するため
教室よりも幾分も涼しく、夏の時期になると政宗は好んでここを訪れていたのだが
今目の前にいる彼にこの場所を教えた覚えはなかった。
元親殿に、恐らくここだろうと聞いて。
余程腑に落ちない顔をしていたのだろうか。
疑問を口に出すより前に彼がそう答えて
成程ここは過ごしやすいと肩にかかった長い襟足を後ろに払いながら言った。
しばらくご一緒しても宜しいか?あまりの暑さに某も教室を抜け出して来てしまった。
政宗がわずかに首肯したのみとめて
幸村は口元を緩めた。