余計なお世話
見てはならないものを見てしまった。
幸村はなるべく不自然に見えないように
目線をそっと手元のアイスキャンディーに戻した。
用向きで政宗と二人駅前に来ていたが
行商に来ている移動式のアイスキャンディー屋を見つけ
興味本位に買い求めたのはつい先ほどのこと。
政宗はソーダ味、幸村はミルク味を選んだ。
そこまでは良かった。
それなのになぜ今こんなに
後ろめたい気持ちにならなければならないのか。
頭をちらつくのは政宗がアイスを頬張る姿で
アイスを溶かし食むというただそれだけのことだと言うのに
形の良い薄い唇だとか、そこから赤い舌が見え隠れする様だとかに
幸村はどうしようもなくいたたまれない気持ちになったのだ。
ほんの少し顎を持ち上げて
肉厚な舌がアイスに絡み付き
溶けたそれが唇を濡らしていく。
思い出しただけで
ごくりと喉が上下した。
「おい真田、溶けてる」
余程ぼんやりしていたのか
政宗の声にもすぐに反応に出来ずにいると
手のひらにヒヤリとした感触が伝わる。
溶けたアイスが指まで垂れて来ていたことにも気づかず
うお、などと素頓狂な声を上げると
その様子を見た政宗は声を上げて笑った。
「お前、ほんと子供みてぇな奴だな。」
子供、というものいいに少々むっとしている間にも
棒を伝って溶けたアイスが再び垂れてきて
いよいよ幸村の指先を濡らした。
その様子を見兼ねた政宗がぐいと幸村の腕を引き
アイスを持った幸村の指ごとぺろりと舐め上げると
さすがの幸村も一気に覚醒した。
心臓はあり得ないくらいに跳ね
血液が沸騰しているのではないかと言うくらい
全身が、熱い。
「伊達殿は破廉恥でござる。」
赤くなった顔を隠すために空いた手で額を押さえて恨ましげに呟くと
親切だろうがとすかさず彼に悪態を突かれた。
身体中に溜まった熱を冷ますために
残りのアイスを急いで平らげる。
政宗の中途半端な欧米風の親切心は
もう二度とごめんだ。