透明傘・その2

玄関を開けると、ばったり小十郎と鉢合わせた。
兼ねてからの用が思いの他早く済んだため、
今まさに政宗を迎えに出ようとしていたところだったらしい。
小十郎の腕には傘が二本掛けられていた。

そのまま二人連れ添ってリビングに戻ると、
傘を持たずに家を出たにも関わらず、
政宗があまり雨に降られていないことを不思議に思ったのか、
小十郎に理由を尋ねられた。
学校の知り合いに、途中まで傘に入れてもらったのだと話せば、
小十郎は目を丸くした。
妙な誤解をされない内に、ちなみに男な?と先手を打つと、
今度その方にお礼をせねばなりませんなと、小十郎は表情を緩めた。
そして、夕食の準備をすべく台所へと向かった。

政宗はその後ろ姿を認めると、
僅かに雨に濡れたのと逆の方の肩に手をやった。
傘を持つ幸村の肩と何度となく触れ合ったそこは、
彼の体温が残っているかのようにいまだ熱い。
こちらに気を遣うばかり、別れ際には幸村の鞄と肩は、
ぐっしょりと水を含んでいたように思う。
何とかは風邪は引かないと言うが、念の為。
先ほど駅で交換したばかりの彼の携帯アドレス宛に
政宗はメールを送った。

 

>小話「透明傘」の続き。
小十郎は政宗に友人が出来たことを素直に嬉しく思っています。
この頃は、まさか真田が悪い虫だとは思ってもいなかったという。