掌
幼い頃、近くの公園で雨宿りをした後、幼馴染を連れて家に戻ると、
何故か親にこっぴどく叱られたことを覚えている。
後から聞けば、両親は雨の中を二人して遊んでいると思ったらしい。
全くもって心外であり、さらに言えば完全なる濡れ衣だ。
次第に弱まっていく雨脚に戻ろうと提案したにも関わらず、
帰りたくないと言ったのは彼の方だったからだ。
今朝方、両親が些細なことで喧嘩をしたらしく、
居心地の悪い家に戻りたくないと駄々をこねる彼に付き合って、
完全に雨が止むまでそこにいた。気付けばとうに日は落ちていた。
今度は逆に心細くなって来たのか、静かに泣き出した彼の手を取り、
戻ろうと言うと、彼は静かに頷いた。
握りしめた手は、小さく温かかった。
姫と呼ばれていた幼い彼はもうここにはいない。
彼が旅立つ日、元気で、と差し出された掌は、
自分のそれを包みこんでしまうくらい大きく、冷たかった。
> 曾我部と毛利の幼少時代のお話。
うちの学園元就は、元親の幼馴染で地元の高校に通っています。
遠距離な上、無意識で両片思いとかどうでしょうか。