もっと遠くへ

カウンターで注文したコーヒーを受け取り口で待ちながら
佐助はちらりと窓の外を見やった。
雨が、アスファルトの上を叩き付けるように降り注いでいる。
雲行きが急に怪しくなって来たなと思った途端
バケツをひっくり返したかのような雨が降って来たため
急ぎ近くのカフェに避難したのだが
この調子だと止むまでにまだ時間がかかりそうだ。
充満する雨の匂いと、纏わりつくような湿気を想像するだけでうんざりした。

 

雨は苦手だった。
昔、大好きだった叔父が亡くなった時も今日のような雨が降っていた。
人望の厚かった彼の旅立ちを拒むような涙雨だったように記憶している。
人は死んだら星になると幼い頃読んだ童話では言っていたけれど、
佐助は激しい雨が降っている時に、誰かが死んだのかと漠然と思うことが多かった。

コーヒーを受け取り、近くの空いている一人掛けソファにどさりと腰をかける。
皮の背もたれに体を沈めると、重みで、ぎゅ、とソファの皮が擦れる音がする。
その刹那、ほんの少しだけ、雨音が遠くなったような気がした。

 

 

 

>内に沈む佐助