極彩色(さなだて)

視界が遮られる刹那、彼がふと笑った気配がした。
何も見えないのも逆に新鮮だなと鉢巻が巻かれた上から
目の辺りをひたひたと押さえている。
お前だって見えないぞ?
そう言って両腕をこちらに伸ばした彼の手を握る。
ならばその分、某を感じて下され。
唇を食みながらそのまま緩く倒れこんだ。
畳の緑に彼の黒の髪が広がる。目元には赤い鉢巻。白い肌。
視界を鮮烈に彩るそれらが眩しくて幸村は思わず目を反らした。

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きっときみを思い出すから(さなだて)

雲ひとつない空を見上げて彼は言った。
出来ればこのような穏やかな日に死にたいものだと。
最後に見る景色がこの青ならば何の悔いもないと、笑った。
そうして空よりも青い戦衣装を身に纏う自分を抱きしめる。
ちゃり、と彼の首にかかる六文銭が音を立てた。

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かわいいひと・その2(さなだてと猫)

件の猫を膝の上に乗せて撫でてやっていると
突然背中にずしりと重い衝撃が走ったので面食らった。
肩越しに後ろを見返せば政宗が背を向けてこちらにもたれかかっている。
表情までは見えないが、幸村はくすりと口元を緩めた。
申し訳ない。大きな猫殿がいらしたので、今日はここまでだ。
膝の中の黒猫に猫撫で声でそう言えば、彼はみゃあと鳴いて
幸村からするりと離れて行った。

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