表現15のお題
01: 奥底(だてとさなだ)
何もない何も感じない何も見ることが敵わない。
瞼の底はただの空洞でしかないというのに
彼は何故あのように、見たい見たいと請うのであろうか。
しかし右の目を彼に触れられると
奥の方で何かじんわりと熱く疼く。
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02: 身を貫くもの(だてとさなだ)
反応しきれず、何とか腰を捻って貫通だけは避けた。
しかし彼の赤い槍が右のわき腹辺りに深々と突き刺さり
その衝撃が全身を伝った。思わず舌打ちをする。
足もとから崩れ落ちそうになるのを防ぐため
刺さった朱槍を右手で抑え込んで、ふと向こうの顔を見やると
何とも呆けた顔をしているから驚いた。
遅れて、槍を伝って腹から血が滴り落ちていった。
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03: 揺らぐ視界(だてと母親と毒)
愛していると優しい嘘をつくあの人が嫌いだった。
けれどその嘘はいつの間にか根を張り蔓を伸ばして
自身をがんじがらめに縛りつけた。
もはや紡がれた言葉のみが真実だった。
喉が焼けるように熱い。
体が千切れてしまいそうだ。
畳にうつ伏せに倒れ込んだまま
彼はすがるように手を伸ばした。
すると彼女はそれはそれは美しく微笑んだ。
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配布元:両忘様