【前置き】
定期テストが終わった打ち上げに、
3組と9組メンバーがカラオケに遊びに来たようです。

 

 


 

 

あなたの声


このようなところは苦手でござるかと尋ねられて、言葉に詰まった。
苦手も何も、実は来るのが初めてだったためである。
政宗は注文したコーラのストローを、無意識に手で上下させながら
大丈夫だと答えた。グラスの中の氷がからんと小さく音を立てた。
政宗殿も好きな歌を入れて下されと分厚い本とリモコンを渡されたが
流行りの歌など全く知らなかったため、そこは丁重に断った。
何を隠そう、政宗は洋楽派だったりするのだが、もっぱら聞くのが専門であり
皆の前で歌うなど到底出来そうにもない。
先ほどから、少し前に流行った有名アイドルグループの曲を歌っている慶次のように
上手く歌えるのであれば話は別なのだが。さすが演劇部の手伝いをしているだけのことはある。
元親は曲の間奏部分で指笛を鳴らして彼の歌を称え、政宗も他の者と一緒に大きな拍手を送った。
確かにこれだけ騒げるのであれば、テスト勉強で溜まった鬱憤も晴れるのかもしれない。
歌い終わった慶次から元親にマイクが回るのをぼんやりと眺めていた政宗だったが
肩口をつつかれたような感じがしたためそちらを見ると、つついた犯人は隣に座った幸村だった。
彼は、こちらに向かって何か言おうと口を開いたのだが
その後すぐ、元親が選曲した歌の前奏がけたたましく始まったため用件が聞こえず
政宗はやや大きめの声で何だと返したのだが、それもあちらには聞こえなかったらしい。
ややあって幸村が何か閃いたような顔つきになり、片方の手で口を半分覆いながら
ずい、とこちらに近づいた。

まさむねどのは、のみもののおかわりはござらぬか

耳元で幸村の低い声がして、全身ぶわりと総毛立つ。
耳打ちをされただけたというのに、なぜか、幸村と体を重ねている時のことがフラッシュバックして
政宗は大いにうろたえた。政宗の耳を食みながら、幸村はいつもうわ言のように繰り返すのだ。

まさむねどの、まさむねどの。すきだ。すき。

部屋が暗くて本当に良かった。
真赤になった顔も幸村に気付かれることはないだろう。
煩い心音も、周りの音が掻き消してくれるはずだ。
政宗は、首をふるふると振って、お代わりはいらないの意思表示をしながら
このまま自分の煩悩も吹き飛んでいってくれることを祈らずにはいられなかった。

 

 

>リクエスト企画#2
「学園さなだてで、学校以外のひとこま」ということで、
拍手からリクエストをいただきました(^v^)
大変遅くなってしまって申し訳ありませんでした・・・!
学校以外ということでどんなシチュエーションにするかさんざん迷ったのですが、
カラオケネタはTちゃんよりいただきました!ありがとう!

無記名の方でしたが、リクエスト本当にありがとうございましたー(^v^)!